19床の入院機能を持った有床診療所

19床の19名の患者さんの在宅復帰にむけて

 有床診療所とは、入院用のベッドが19床以下の医療機関のことを指します。日本全国に有床診療所はありますが、実はその数は年々減少傾向にあります。私たちは、ここで地域の皆様の在宅生活を支えるために、有床診療所として医療を続けております。
 
 誰しも好んで入院される方はいらっしゃらないと思います。ただ、住み慣れたご自宅で暮らし続けていくためには、状況に応じて治療に専念するためにも入院することが必要な時もございます。
 
あくまで、在宅生活を続けるための、ご自宅に帰るための入院です。
 
私たちは、高度な治療に特化した大学病院などの高度急性期病院とは異なります。大きな手術などはできません。私たちの役割は別にあります。
超高齢化社会が進む中、医療も変化してきております。若い世代であれば治療し完治する「とことん医療」が中心ですが、完治できない疾患と付き合っていかないといけないのが、高齢者の方の医療の特徴でもあります。自分の身体とどう付き合って、寄り添って生きていくのか。それも住み慣れた地域、愛着のある我が家で生活していくために、必要に応じて入院していただき、できるだけ早くご自宅に帰っていただく。そのような機能を私たちは担っております。
 
また、大病院などに入院されていて治療が終わった場合、即退院となりますが、そこからいきなりご自宅での生活には大きな不安を抱かれる方も多くいらっしゃいます。そんな方々にも在宅でしっかりと生活していけるように、当院に一旦入院され、在宅で生活できるだけの機能強化をリハビリなどを通じて図られる方もいらっしゃいます。どちらにしても、在宅に帰るためです。ご自宅で生活するための入院です。
 
 当院に入院される患者さんの疾患としては、腰椎圧迫骨折などの外科・整形外科系疾患が多いですが、肺炎気管支炎や経口摂取不良の疾患で入院される患者さんも多くいらっしゃいます。また、「レスパイト」と言って、治療や検査目的の入院ではなく、ご本人様の心身の回復、機能維持を図るとともに、ご家族の方にとっても休息の時間を確保することを目的として入院されることもございます。ご自宅で生活を続けていくために、当院のベッドを上手に使って頂ければと思っております。
 
 よく患者さんやご家族さんから、当院のスタッフはとても優しく丁寧とお褒めのお言葉を頂くことがございます。大病院では、患者さんの疾患を早く治療して、一日でも早く退院できるように、ということを核に考え、病棟のスタッフは日々ケアにあたっていると思います。早く退院したい患者さんにとっては、とてもウォンツとニーズにあったケアだと思います。でも私たちは違います。早く退院していただくことが第一ではありません。退院後のご自宅での生活できるレベルを少しでも高めて頂くことが大切だと捉えております。そうすると、ある時は患者さんとゆっくりお話をしたり、寄り添ったり、そういうケアになっていきます。
 
ご自宅に帰るために
 ご自宅に帰り、生活を続けていくために、ADL(日常生活動作)を向上させることが大切だと考えております。ベッドの上でずっと寝ていては、仮に主疾患が良くなったとしても、その人の生活していくための力は衰えてしまう可能性があります。 私たちは、ご自宅での生活を続けて頂くために取り組んでいます。ですから、入院期間中は可能な限り離床などを促します。ご飯もできる限り食堂を案内しますし、トイレなどへもできる限り促し、ベッドで寝たきりなんてして頂きません。体力をつけて頂くことも入院中の大切な要素だと捉えております。
もちろん、全員に無理強いしたりすることはございません。19床19人の患者さんだからこそ、その人その人にあったケアを行なっております。褥瘡保有率(床ずれ)がとても低いのは、私たちが日々取り組んでいるケアの評価だとも思っております。
 それは、人的なケアなどのソフト面だけでなく、ハード面においても患者さんのADLを考え、高品質のマットレス(パラマウントベッド社「エバーフィットC3マットレス」)を全てのベッドに導入している点なども挙げられます。ハードとソフトの両面からの取り組みが、褥瘡保有率などの指標として可視化されております。
 
「ときどき入院・ほぼ在宅」で可能な限りご自宅で過ごせるよう支援しています。